「治らない」病気の診療における考え方

☆「治らない」病気の治療目標

前項でご説明した「治る」病気と異なり、「治らない」病気は、医療者、患者さん双方がどんなに「頑張っても」(侵襲度の高い治療をしても)、治りません。
このため治療の目標は、「治す」ことではなく、「病気とうまくつきあっていく」こと、すなわち「元気な時間 (青点線より上の状態) を長引かせること・延命」です。すなわち、基盤となるのは時間軸のどの段階においても緩和治療であることを理解する必要があります。
「元気な時間を延ばす」にあたり最も重要なことは、「症状を緩和すること」です。痛みや呼吸困難などの症状が有ると、「痛いために動きたくない」「苦しいので食べたくない」など「元気度の低下」が早くなります。(figure:青線で記載)これらの症状を緩和することで、「元気度の低下」は緩やかになります。

一方、癌をはじめとする難治性疾患において、ある程度元気度が保たれた患者さんでは、癌を縮小させることで、元気な時間をさらに延ばすことが可能になります。
進行固形癌の診療方針において、「抗癌剤⇒抗癌剤が使用できなくなったら緩和治療」という誤解が存在しています。このような誤解は、「緩和治療となるともう打つ手はなく最期の段階である」といった悲観的理解につながってきます。
そうではなく、あくまで基盤となるのは「緩和治療」であり、「抗癌剤」は上乗せしていくもの、どちらも治療目標は「元気な期間の延長・延命」であることに注意が必要と思います (NEJM 2010;363:733)。

☆進行固形癌に対する抗癌剤治療の目的

進行固形癌に対する抗癌剤治療の目標は、この低下速度を緩やかにすることです (figure)。概して、元気な状態では (黒点線より上。PS 0~2の段階)、腫瘍の大きさと元気度は反比例します。ゆえに癌の大きさや腫瘍マーカーなどの数値を指標に、治療を続けていきます。

一方、いずれの抗癌剤にも、何らかの毒性が存在します。このため、病状の進行、もしくは年齢に伴い元気でなくなった方に対して抗癌剤を投与すると、毒性によりこの低下速度を急速にしてしまう (figure2:赤線矢印)、すなわち、元気な期間を短くしてしまう可能性があります。
よく、「病院からもう治療はないといわれて見捨てられた」、というようなコメントを耳にします。これは、「抗癌剤を投与しても効果がないばかりか元気な期間を短くさせてしまう可能性がある。このため、あえて具合が悪くなるとわかりながら投与することはしたくない」というニュアンスの話が、別の角度から理解され伝わってしまっていることが原因だと思います。


☆時間軸の理解の重要性

前述の通り、緩和治療は、「治らない」病気の診療において基盤となる治療です。時間軸が右へ行き元気度が低下した段階では、抗癌剤のdemeritがmeritを上回る可能性があるため、緩和治療単独での診療を行っていきます。
このように内科医は、抗癌剤をはじめとする癌に対する治療と癌による症状に対する緩和治療を組み合わることで、「癌を治すことはできないものの、元気な期間を長引かせる」ために全力を尽くします。
しかし、前述の時間軸を医師・患者さんの双方で理解していない場合、治療目標が不明瞭となってしまうことがあります。
診断時、患者さんが「頑張れば治るかもしれない」という理解をしてしまうと、「頑張れば治ると信じ、元気でなくなっても抗癌剤治療がやめられない」、「癌の大きさばかりに執着してしまい、気付くと毒性によりPSが低下してしまう」といった現象が生じてしまいます。

☆抗癌剤は是か非か

以前、「抗癌剤は是か非か」のような話題が社会問題となりました。この「是か非か」は、前述の通り時間軸によって変わってくるため、「正解」はありません。
しかし、このような問題が話題となった背景には、元気でなくなっても延々と抗癌剤治療を継続し、病院に受診できなくなってはじめて中止する、この際の喪失感や見捨てられたという思いが医療不信へと発展していることも一因であると考えまられす。
臨床現場では、目の前の患者さんが時間軸のどの時点にいて、「元気な期間を延ばすため」に、緩和治療のみである方がよいか、抗癌剤治療を上乗せすべきか、慎重に判断して説明していくことが重要になります。

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